アンコンシャスバイアスとはどんなこと?
アンコンシャスバイアスとは
「アンコンシャスバイアス」とは、自分自身が無意識のうちに感じている物事への見方・受け取り方などのゆがみや偏りを言います。
人は考えるより先にあらかじめ「こうであろう」という「自分なりの法則やルール」を立てておくことで、常に物事を一から考えることを減らす行為をするのです。これは「高速思考」「自動思考」とも言われていることもあります。
アンコンシャスバイアスはこの「あらかじめ用意されている思考」が偏っているために、周囲とのコミュニケーションのズレや問題を起こしやすくしてしまうのです。
発達障害は、アンコンシャスバイアスが強く現れるケースが多い
発達障害を持っていると、このアンコンシャスバイアスが強く出ていることが多いです。そのため自分で感じている「自分ルール」によって周囲を振り回してしまったり、うまく関われずにストレスをためてしまったりするケースが見られます。
さて、今回はそのような発達障害を持つ方が抱えやすい「周囲と自分ルールとのずれ」「思い込みによる周囲とのずれ」に気づき、改善していくための方法として『アンコンシャスバイアス』を紹介していきます。
まず、発達障害を持つ方が問題として抱えやすい「自分ルール」について見ていきましょう。
【発達障害】コミュニケーションで問題になりやすい『自分ルール』
他者の行動に対して「許せない」という感情を抱きやすい
職場や私生活の中で、「許せない」と感じることはありますか?いくつか例を挙げてみましょう。
・通勤電車の中目の前にお年寄りがいるのに、席を譲らない人がいる
・同じ発達障害を持ちながら自分は頑張って口頭で会話しているのに、メモのやり取りで済ませている人がいる
・自分は毎日しっかり上司に業務報告をしているのに、時々しか報告しない人がいる
この中で「許せない」と思ったことはいくつありましたか?発達障害を持ち極端な思考が強いと、全て許せないかもしれません。
これは、
・席を譲らない→譲れる状況なのに「座りたい」というだけで譲ろうとしていない
・発達障害→みんな頑張れば口頭で会話ができる
・業務報告→状況に関わらず、毎日するもの
上記の3つを許せないと感じた場合、このような心理が働いているのではないでしょうか。
しかし相手がどのような状況なのかは、相手でないと分かりません。これを無視して「思い込み」で判断してしまうことで問題が起きてしまうケースがあります。
自分にとって良いことは、全て相手にとっても良いこととして行動してしまう
発達障害を持ち、自分ルールが強い場合「自分が正しい・良いと感じていること」をそのまま「相手にとっても良いことだ」と思い込んで行動してしまうことがあります。
例えば、落ち込んでいるときに声をかけてもらいたいと感じている場合、相手の事情を無視して「良かれと思って」声をかけてしまうのです。しかしいざ声をかけてみると「放っておいてください!」と怒られてしまうケースを経験したことがあるかもしれません。
このように、「自分にとって良いことは相手にとっても絶対良いこと」だと決めつけて行動することで事態を混乱させてしまうこともあるのです。
自分の価値観や考え方と異なることを「間違い」と決めつける
人の考え方は、個人個人それぞれの考え方があります。これを知識として理解していても、いざ異なる価値観などに直面した時に「間違い」だと感じてしまいやすいのです。
これには様々な事態に備え、臨機応変な対応が苦手なことなども原因にあります。その場で対応を変えようとすると混乱してしまうために、常に一定の価値観から見てしまいがちです。
これにより考え方や価値観が異なる相手を攻撃、否定するケースが多くなります。そのため周囲から不満や反感を買う結果となり、コミュニケーションが取りづらくなってしまうのです。
関連記事:発達障害を持つ方が「白黒思考」に苦しむのはなぜ?職場での予防法
アンコンシャスバイアスは、このような問題を起こす原因になりかねません。では、アンコンシャスバイアスを改善させ、「自分ルール」や「思い込み」を調整していくためにはどのような方法があるのでしょうか。
アンコンシャスバイアスを見直し、「思い込み」を改善する方法
自分ルールの元となる「偏見」や「先入観」をチェックしてみる
アンコンシャスバイアスは、無意識のうちに生じる感覚です。したがって、考えただけでは見つからないケースがあるかもしれません。
そのような潜在的に持っている意識を知るためのテストを受けることで、アンコンシャスバイアスに気づきやすくなります。場合によっては「そんなケースもあるんだ!?」と驚くことがあるかもしれません。
今回は、ハーバード大学とワシントン大学が共同開発したアンコンシャスバイアスのテスト(IAT)を紹介します。下記の参考リンクに日本語版がありますので、興味がありましたら受けてみてください。
参考: IATテスト ホームページ
自分の偏見や先入観の傾向に注意して、普段の会話に活かしてみる
テストの結果から、自分がどのような項目で偏った考え方をしているか、年齢や性別などさまざまな「偏見」の傾向が見えてくるのではないでしょうか。
この偏りやすい項目に注意して相手と接したり、受け取り方を変えてみたりすることで改善される可能性があります。「年の割には…」「女性なのに…」などの根本的な心情が変わることで、表現される言葉や行動にも変化が見えてくるでしょう。
発達障害を持つ方にとって、いくつも正しいことが存在することに違和感を覚えることがあるかもしれません。しかしルールで統一させようとすればするほど、人の「個性」や「自由」を奪ってしまうことになりかねないことを覚えておきましょう。
自分の中の「絶対」について見直してみる
自分ルールが強い場合、言葉の節々に「絶対」というワードをよく使うことがあります。この「絶対」という言葉は相手の考えを否定することになるときがあります。
自分が「絶対」「それ以外にない」と意識している物事をもう一度見直してみましょう。こうして様々な価値観や状態を意識することで、自分にとって想定外の事態が来た時に動揺しにくくなる効果もあるかもしれません。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
よく発達障害は「他人の気持ちが分からない」「わがまま」と言われるケースがあります。しかし、このアンコンシャスバイアスの考え方のように「思考や思い込みの仕組み」を知ることで改善され、他者との関わりでのストレスが軽減されるかもしれないのです。
生活の様々なケースの中で「許せない!」「ありえない!」と感じることが多いと感じたら、いちどアンコンシャスバイアスについて考えてみる良い機会かもしれません。