衝動的な発言をしてしまうあなたへ!ADHDの障害特性を理解し、言葉を選ぶ練習を始めよう
ADHDの特性と衝動的な発言の関係
衝動性と不注意が言葉に表れる
ADHDと診断された方やADHDの傾向のある方で「言わなくていいことを言う」「一言多い」などと指摘された経験のある方もいるのではないでしょうか?
ADHDの障害特性の一つである衝動性は、考える前に余計な言葉を口にしてしまう原因となります。また不注意の特性も、発言内容に誤りや不適切な表現が含まれる可能性を高めます。
これらの特性が組み合わさることで、衝動的な発言につながりやすくなります。
衝動的な発言がもたらす 深刻な5つの影響
[1]信頼関係の崩壊と孤立
衝動的な発言は、周囲の人を傷つけたり、誤解を与えたりする可能性があります。
これにより、信頼関係が損なわれ、孤立感を感じてしまうことがあります。
例えば、会議中に思いついたことを、他の人の話を遮って発言してしまうと、周囲から「考えなしだ」と思われてしまい、信頼を失う可能性があります。
[2]プライベートな人間関係悪化の深刻な影響
職場だけでなく、プライベートな人間関係においても、衝動的な発言はトラブルの原因となります。
家族や友人との関係にヒビが入ってしまうと、心の支えを失い、孤独感を深めてしまう可能性があります。
孤独・孤立の状況はうつ病などの精神的な問題を引き起こす可能性があり、心疾患やアルツハイマー病、認知機能の衰えなどの健康リスクが高まります。
[3]成長の機会を失う
新しいことを学ぶ機会を失う⁉
衝動的な発言によって周囲から避けられてしまうと、新しいことを学ぶ機会が減り、自己成長が妨げられます。
[4]仕事のパフォーマンス低下
ミスが増えて評価が下がる
衝動的な発言は、仕事上のミスに繋がる場合があります。
例えば、顧客とのやり取りで不適切な発言をしてしまい、契約を失って会社が損失をこうむるといったケースも考えられます。
また、周囲から信頼を失うことで、昇進や異動の機会を逃してしまう可能性もあります。
[5]社会生活を送る上で様々な困難に直面する
職場だけでなく社会生活のあらゆる場面で、衝動的な発言はトラブルの原因となります。
周囲の人とトラブル繰り返すことで、結果として社会的な信用を失い、社会生活に適応することが難しくなる可能性があります。
衝動的な発言を避ける5つのメリット!
衝動的な発言を避けると、周囲の人とのコミュニケーションが改善される以外にもメリットがあります。
[1]キャリアアップのチャンスが広がる
評価されるチャンスが広がる
衝動的な発言を避けることは、周囲から高い評価を得ることにつながります。
上司や同僚からと良好な関係を築き信頼を得られれば、キャリアアップのチャンスが広がるでしょう。
[2]新しい人間関係を築きやすい
好印象を与え、人脈を広げる
初対面の人と話す際、衝動的な発言を避け、言葉を選んで話すことで、好印象を与え良好な人間関係を築きやすくなります。
新たな人間関係を築いて人脈を広げることは、仕事やプライベートにおいて、多くのメリットをもたらします。
[3] 交渉力の向上
相手とWin-Winの関係を築ける
冷静に相手の意見を聞いて、また自分の考えも正確に相手に伝えられることで、Win-Winの関係を築くことができます。
双方の利益のバランスを探って落としどころを探るコミュニケーションスキルがあれば、交渉が成功しやすくなります。
[4]ストレス耐性の向上
困難な状況でも冷静に対応できる
ストレスとなる突発的な出来事や困難な状況に直面した際、冷静に言葉を選んで対応することで、より効果的に問題解決に取り組むことができます。
ストレスへの対処がうまくいく成功体験を積み重ねれば、ストレスに対する不安が軽減し、ストレス耐性が向上します。
[5]レジリエンスの向上
困難を乗り越える力が強くなる
衝動的な発言による失敗から学び、同じことを繰り返さないように対処することで、困難な状況を乗り越える力(レジリエンス)を養うことができます。
参考:大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を! | 政府広報オンライン
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
【言葉を選ぶ練習】今日から実践できるテクニック
【はじめに】言葉を選ぶテクニックを実践する前にすべきこと
自分の行動パターンを客観的に分析する
まず自分の衝動性を客観的に理解することが大切です。
どのような状況で衝動的な発言をしてしまうのか、どんな言葉を使ってしまうのか、具体的に書き出してみましょう。
自分の行動パターンを把握することで、改善のヒントが見つかります。
たとえば、「他の人が話している最中でも、思いついたことをすぐに発言してしまう」「感情的になると、相手を傷つけるような言葉が出てしまう」など、具体的な行動を書き出してみましょう。
相手の立場に立って考える
相手の気持ちを想像し、言葉を選ぶ
発言する前に一度立ち止まって、相手がどう感じるか考えてみましょう。
自分が同じことを言われたらどう思うか、想像してみてください。
わかりにくい場合は、自分が「衝動的な発言で失敗した」「『失礼なことを言う』と怒られた」ときの経験を分析し、不適切だった自分の発言がどの表現なのか、相手はなぜそう思ったのかを振り返ってみるのも良いでしょう。
自分の「余計な一言」が具体的にどんなタイミングのどういう言葉なのか自覚することも重要です。
今日から実践できる”言葉を選ぶ”テクニック
一時停止ボタンを押す
衝動的な発言が出る前に、深呼吸しよう!
衝動的な発言が出そうになったら、しゃべるのをやめて一旦ストップしましょう。
深呼吸を3回して、心身を落ち着かせます。
この間に言いたいことを整理し、言葉を選ぶ時間を作りましょう。
深呼吸は副交感神経を優位にし、冷静さを取り戻す効果があります。
また、深呼吸をゆっくりと3回すれば、ちょうど5~6秒程度の時間になります。
怒りの感情をコントロールするテクニック「アンガーマネジメント」の具体的なやり方として、怒りの感情にまかせて行動し、衝動的に不利益となる行動をしてしまうのを防ぐために「6秒待つ」テクニックが有名です。
6秒待つことが有効な根拠は、感情をコントロールする脳の部位である前頭葉が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3~5秒程度と考えられているためです。
つまり“6秒待つことにより、前頭葉のはたらきによって衝動的な行動を抑えることができるようになるため、衝動的な発言を防ぎやすくなるのです。
参考:脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ:「怒り」との上手な付き合い方:日経Gooday(グッデイ)
言葉の言い換えを練習する
より穏やかで丁寧な言葉に変えてみよう!
たとえば「ダメ」「できない」といった否定的な言葉は、相手を傷つけたり、反発を招く可能性があります。
同じ内容をより肯定的な表現で言い換える練習をしましょう。
[否定的な言葉の例]
(顧客からの困難な要求に対して)「無理です」
[言い換えの例]
「あまり対応したことがないケースなので少し難しいかもしれませんが、調べて可能な限り対応させていただきます。もし問題があったら、またご相談させてください。
いつもお世話になり、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。」
[言い換えの意図と目的]
相手の意見と要望をしっかり聞いて対処する姿勢を示すことで、「できなかったとしても誠実に対応してくれた」という印象になります。
最後に自分を信頼して依頼してくれたことに関してお礼とあいさつの言葉を付け加えることで、継続的に良好な関係を築く意思を持っていることを伝えられます。
[否定的な言葉の例]
(上司からの残業の依頼に対して)「できません」
[言い換えの例]
「申し訳ありませんが、この後、家族を車で病院に送る予定があるので、今日は残業するのは難しいです。明日朝一番の対応でもよろしいでしょうか?」
[言い換えの意図と目的]
相手が納得できる理由を述べることで、勝手な理由や感情的な理由で断っているのではないこと、反抗的な態度をとっているのではないことが伝わります。
代わりの案を示すことで、相手の依頼に対して積極的に取り組む気持ちがあることが伝わります。
また「絶対○○だ」「△△するのが一番いい」などの極端すぎる表現は、相手が間違っていると決めつけて批判するような印象を与える可能性があるので、よりソフトな表現にとどめると穏やかな印象にできます。
[極端な表現の例]
(相手と意見と比較して)「■■よりも、△△するのが一番いい」
[言い換えの例]
「■■するのもいいですね! 私は△△する方法も良いと思います」
[言い換えの意図と目的]
自分の意見が相手の意見より絶対に優れていると決めつけるような言い方で、相手を批判し見下している印象があります。
相手の意見が間違っていると思ったとしても、相手の意見も尊重する姿勢を見せましょう。
[極端な表現の例]
(相手のミスに対して)いつも同じミスをするね。
[言い換えの例]
この点については、もう少し注意してみましょう
[言い換えの意図と目的]
相手の落ち度を大げさに言うことにメリットはありません。
状況の改善や再発防止の役には立ちませんし、相手との関係も悪くなり、他の人に発言が伝われば「きつい人、いやな人」と思われます。
話題を改善や再発防止の提案に変えることで、相手に悪く思われず、状況の改善に協力することができます。
穏やかで丁寧な言葉の語彙が少ない人もいると思います。
言い換えの表現を多く知っていると、コミュニケーションや仕事の上で、スムーズに目的を達成しやすくなります。
人に好かれている人や、「感じがよい」と思う人を観察し、穏やかで丁寧な言葉、印象のよい表現を真似してみましょう。
感情を整理する
自分の気持ちを整理し冷静さを保つ
衝動的な発言をしてしまい失敗した時や感情が昂ぶっているときなど、どうしてもその考えが頭から離なくなってしまうときがあります。
そんな時は自分の気持ちを言葉して書き留めることで、客観的に状況を把握することができます。
日記やノートに、自分の考えや気持ちを書き出すことは、感情を整理し、冷静さを保つのに役立ちます。
専門家への相談
精神科医など、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
専門家から客観的なアドバイスを受けることで、より効果的に問題に対処することができます。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
SSTとは社会生活を送るにあたり必要なスキルを伸ばすための訓練法です。
具体的には、仕事や生活のさまざまなシーンを想定して対応方法のシュミレーションを行います。
病院などで、ADHDの人に向けたSSTも実施されています。
SSTを受けたい場合は、近くの病院でSSTが実施されているか調べてみましょう。
参考:発達障害専門プログラムマニュアル ~コミュニケーションの基礎編~|昭和大学発達障害医療研究所|厚生労働省(PDF)
参考:米田衆介2009「自閉症スペクトラムの人々の就労に向けたSST」『精神療法』第35巻第3号|明神下診療所(PDF)
ロールプレイング
専門家によるSSTを受けるのが難しい場合は、信頼できる友人や家族と、ロールプレイングを行うことでコミュニケーションの練習をすることもできます。
実際の場面を想定して、言葉を選びながら会話をする練習をすることで、実践的なスキルを身につけることができます。
例:上司からの残業の依頼を断る練習 / クライアントのクレームに対応する練習
周囲の人とのコミュニケーションを円滑にする
周囲の人にADHDの特性を伝える
周囲の人たちに、自分がADHDの特性を持っていることを伝え、衝動的な発言をしてしまうことがあることを説明しましょう。
理由を説明すれば必ず失礼な発言が許されるということではありませんが、仕事で一人で対処しきれない問題を起こした際には、周囲の人の協力が必要になります。
失敗したときのリカバリーをサポートしてもらうためにも、特性について説明し、理解してもらえるようにお願いしましょう。
協力者を見つける
仕事仲間や友人、家族など、信頼して困りごとを相談できる協力者を見つけましょう。
衝動的な発言で困ったときに、相談できる人がいると心強いです。
また、衝動的な発言をしたときに一緒にいれば、フォローをしてくれる場合もあります。
協力者の力に頼りすぎず、フォローやアドバイスから学んで改善に努めましょう。
フィードバックを求め、改善点を見つける
周囲の人からフィードバックをもらうことで、自分のコミュニケーションの改善点を知ることができます。
友人や家族などの相談相手でも構いませんし、仕事に関する内容の場合は上司や先輩などの指導者に意見を求めることもできます。
客観的な意見を参考に、より良いコミュニケーションを目指しましょう。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
小さな一歩から始めよう
衝動的な発言を完全に無くすことは難しいかもしれませんが、少しずつ改善していくことは可能です。
変化は一朝一夕にできるものではありません。
成果が実感できず悩んだり落ち込んだりすることもあるかもしれませんが、大切なのは、諦めずに続けることです。
小さな一歩を積み重ねることで、必ず成果につながります。