職場の対人関係で、うつ病を発症してしまう
うつ病を持つ方が働き続けることが難しい
障害者雇用促進法や障害者差別解消法などの施行や改正に伴って、障害を持つ方が働きやすい環境になるよう取組が進んでいます。
しかし、障害を持つ方が安心して働き続けることができる環境になったかというと、そう言いきれない問題があります。
特にうつ病などにおける精神障害を持つ方に関しては、就職しても一年以内ですぐに辞めてしまう方が多くいるのです。
職場の対人関係へのストレスで、うつ病を発症・悪化するケースがある
離職する原因で最も多いのは、「対人関係」「コミュニケーション」の問題です。関わりの中や自分の精神状態を保つことにストレスを感じ、体調を崩してしまうことが多いのです。また、うつ病の状態が回復し復職した場合でも、同じ環境に戻ることで再度うつ病を発症してしまうケースもあります。
このような発症(再発)と回復を繰り返すことで、働くことへの自信とやりがいを失ってしまうこともあるのではないでしょうか。
うつ病など、精神障害を持つ方がストレスを感じやすい要因
ストレスの対象となる人物がいる
対人関係で問題となる場合、上司やその他良く関わる人物がストレスの原因となっているケースが多いのではないでしょうか。
自分なりに懸命に取り組んでいても激しく怒ってくるような上司がいたりすると、不安で仕事に集中できないどころか、体調が悪化してしまうこともあるでしょう。
照明や騒音など、受け入れられない感覚がある
場所を含む、環境に関わるストレスです。「照明が明るすぎる」「電話の着信音など、周囲の音がうるさい」「においが耐えられない」など、障害を持たない方には理解されにくい困難を抱えていることがあるのです。
そのものはとても小さなことかもしれません。しかし常に積み重なるストレスとして、体調に支障をきたす原因になることもあるのです。
慌ただしい雰囲気の中で自分だけ取り残された感覚がある
うつ病を発症すると、意欲や気分の低下が症状として現れる場合があります。この場合、職場で周囲が慌ただしく働いている中で、自分だけ取り残されたような「孤独感」を感じます。
それがまたストレスとなり、症状の悪化を招いてしまうケースにつながってしまうのです。
このような事態ではうつ病を発症した場合、『休む』か『辞める』の2択しかありません。どちらにしても一度つかんだ仕事のペースやリズムを失う結果になるのです。これでは成長することができず、さらにうつ病を持つ方が自信を無くしてしまいます。
このような問題を解消する方法として、今、『ワーケーション』という新しい働き方が生まれつつあるのです。それでは、その「ワーケーション」についてお伝えしていきます。
『ワーケーション』とは、どんな意味?
ワーケーションとは
ワーケーションとは、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、文字通り「旅行しながら働く」という斬新なスタイルです。特定の形式はまだ決まっていませんが、有給休暇を取得し旅行先でICT(情報通信技術)を用いて業務を行っていくというスタイルであることが多いです。
これは従業員の有給休暇取得率が低い問題を改善するために、2000年代にアメリカで誕生しました。日本でもワーケーションを導入している企業が出てきています。
・障害を持つ方が多様に・高い生産性で働けるよう、テレワークを導入できるノウハウを得る
・休暇を取ることができない従業員に、家族サービスをしてもらう
このような目的から、短期間にわたりオフィスを離れ、旅行先にて業務を行っていくのです。
それでは、具体的にどのような場面や状態のときに効果が期待できるのか説明していきましょう。
【ワーケーション】うつ病の原因から離れ、ストレス改善に期待される効果
一時的にストレスの要因から離れ、かつ負担なく業務を行う
うつ病を発症・再発した場合、多くのケースは休養することになるでしょう。筆者もうつ病を発症した経験がありますが、長期休養を余儀なくされました。
しかし、休めばすべてが安心するかと言うと、そうではないケースもあるのです。突然職場から離れ「何もない生活」になることで、『見捨てられた』『自分は必要のない人間なんだ』と追い込んでしまうおそれもあるのです。
このような『心の負担』を軽減するため、ストレスを想像させるような環境から離れて仕事を行う「ワーケーション」の効果が期待されます。
一時的にストレスの要因から離れ、かつ負担なく業務ができることで「程よい達成感」を得ながら回復に向かうというケースもあるのではないでしょうか。
休養から復帰の際、事前のステップとしても行いやすい
海外など遠隔地ではなく、電車など公共交通機関で行ける程度の場所であれば復職前の「準備段階」としてストレスの負担が少ない状態で仕事ができ、復帰しやすい状態につながるかもしれません。
このような効果でもって、うつ病を持つ方が
・症状の悪化を防ぐ・回復しやすくなる
・復職へのステップとなる
上記の効果が、ワーケーションによって改善が期待される効果です。
では、うつ病と向き合いながらワーケーションを行う際には、どのような注意が必要でしょうか。
参考:ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康の向上に寄与するワーケーションの効果検証を目的とした実証実験を実施|JTBグループサイト
ワーケーションを行う際に注意すること
事前に医師と相談し、体調管理に気を付ける
まずは医師とよく相談し、旅行ができる状態であることを確認しましょう。知らない環境で動揺することや、業務の流れなどで混乱してしまう可能性があります。
そのようなときにも落ち着いて対処できる体調であるかどうか、事前に確認しておくことが必要です。
生活リズムを保つ
環境が変わることで、毎日の生活リズムが乱れることのないようにしましょう。
あくまでも、勤務時間中は「仕事」で、勤務時間外は「オフ」なのです。オフィスにいないため、この境目を自分で決めなくてはならない機会が増えるでしょう。
したがって、決められた時間内に業務を行えるだけの生活リズムが整っていることが大切なのです。
職場との連絡を行い、所在を明確にする
ワーケーション中は、自分の行動は職場には見えていません。そのため、勤務時間中には定期的に職場に連絡を行い、所在を明確にするようにしましょう。
電話が不安な場合は、メールやチャットでも構いません。職場に安心してもらうことこそ、ワーケーションを続けていくコツです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
ワーケーションはまだ歴史の浅い、これから進化や変が予想される制度です。しかしワーケーションが浸透すれば、精神的に辛い状態のまま出勤し続ける苦労が緩和されるかもしれないのです。
ワーケーションの今後の動向に注目していきましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。うつ病の診察をきっかけに広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。うつ病を発症していたころは、職場に近づくだけで具合が悪くなり、職場に行く時間が近づくにつれて発熱していた。