障害者雇用支援サービスとは?
障害者の就業を支えるさまざまな支援
障害者雇用支援サービスとは、障害を持つ人が職場で働くために必要な支援を提供する取り組みのことです。
そのため、企業と障害者の方々の双方にとって利益をもたらすものです。
働きたい障害者にとっては、就職や職場への定着をサポートしてくれる重要な支援となります。
一方、企業側にとっては、法定雇用率を上げて社会的な責任を果たしたり、条件によって助成金を受けたりするための助けになります。
具体的にどのようなサービスがあるのか、見ていきましょう。
障害者雇用を支援するサービスの種類
障害者雇用支援サービスには大きく分けて公的なサービスと民間の提供するサービスの2種類があります。
公的な障害者雇用支援サービス
ハローワーク
ハローワークでは障害者に限定して募集を行うことができます。
また、事業者が積極的に障害者を雇用できるように、職域開拓、雇用管理、職場環境整備、特例子会社設立などについての相談を受け付けています。
さらに、トライアル雇用、ジョブコーチによる支援、職場適応訓練、障害者雇用に関する助成金の案内も行っています。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、就職を希望する障害のある人に仕事に関するトレーニングと就職活動のサポート、就職後も長く働き続けられるよう職場への定着支援を行っています。
それに伴い、障害者雇用を行いたい企業と連携して障害者に配慮した仕事の創出や職場環境の調整、就職希望者の状況を把握して面談などに同席するなどの支援を行います。
事業所にはそれぞれ特色があり、重点的に行っている訓練や、強みとする職種、障害の種別などがそれぞれ異なります。
たとえば精神障害の方の支援を専門に行う事業所、IT関連の職種を希望する人に向けた訓練に力を入れている事業所などがあります。
就労移行支援事業所との相談・連携を考えている場合は、自社の採用の要件とマッチする支援を行っている事業所を選びましょう。
参考:企業が得られるメリット〜就労移行支援事業所の活用〜 | ミルマガジン
参考:就労移行支援事業所と連携する 採用・定着のためのポイント | 障害者雇用を企業の力に変える【チャレンジラボ】
地域の支援機関
ハローワークや就労移行支援、就労継続支援のほかにも、地域ごとに障害者の就職を支援する機関があります。
地域障害者職業センターでは、ハローワークと連携して障害者のある人に向けて、障害者に対する
専門的な職業リハビリテーションを提供する施設として47都道府県に設置されています。
障害のある人を採用する企業に向けて、障害への理解を深めるための企業内研修のサポート、障害のある社員がスムーズに職場定着できるようにジョブコーチを派遣する、うつ病などで休職している社員の職場復帰をサポートするリワーク支援などの支援を行っています。
障害者雇用にあたり支援機関の活用を検討している場合は、地域障害者職業センターへの相談もひとつの選択肢となるでしょう。
社会福祉協議会
地域の社会福祉協議会で、地域のハローワークと連携して、障害者が企業で働くための求職活動の支援や、障害者の職場実習の受け入れの支援、就職後の雇用継続のための定着支援を行っているところもあります。
所在地や近隣の地域に該当する機関があるか調べてみるとよいでしょう。
特別支援学校
特別支援学校の卒業生は、ハローワークを通じて雇用の手続きを行うことにより、障がい者雇用に関する支援制度(特定求職者雇用開発助成金など)の対象となります。
また、生徒のインターンシップの受け入れ先を募集しているところも多くあります。
事業所の所在地や近隣地域の特別支援学校、または地域の役所の特別支援教育に関する窓口など、募集をしているところに問い合わせてみましょう。
民間企業の障害者雇用への取り組み事例
社内に障害者社員によるマッサージルームを設営
社内にマッサージルームを設営し、社員に向けてマッサージを行う「あん摩マッサージ指圧師」などの国家資格を持つ視覚障害者を社員として雇用する取り組みがあります。
マッサージルームは社員が疲労回復やリフレッシュのために利用できます。
マッサージルーム開設のために施設を整えたり、障害者を雇用するための費用は、障害者作業施設設置等助成金の助成対象となります。
助成金の詳細については、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で詳細を確認してください。
参考:障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
参考:ヘルスキーパー採用によるマッサージルーム運営の取り組み|障害者雇用事例リファレンスサービス|高齢・障害・求職者雇用支援機構
自社内カフェを創出し障害者をバリスタとして雇用
雇用する障害者へ向けた仕事の切り出しが難しい状況のとき、障害者の仕事の領域を広げるための案として社内にカフェを創出する取り組みがあります。
社内にカフェを設営し、障害者をバリスタとして雇用することで仕事を創出します。
ロボットを利用した仕事の創出
障害のある人がパソコンで遠隔で操作するロボットが案内や接客の業務を行う働き方が、試験的に実施されています。
障害者がロボットを通して受付での案内やカフェでの接客などの業務を行います。
視線入力のパソコンを利用して、外出や作業などに困難のある障害や病気などで体の動かせない人も働けるしくみとして注目されています。
農園型の障害者雇用
農園型の障害者雇用支援サービスでは、障がい者採用を行う企業に働く場所となる農園と障害者雇用の専門家や障害者雇用のノウハウなどを提供し、障害のある求職者を紹介して、企業が障害のある求職者と雇用契約を結ぶサービスです。
障害者にはサポート環境のある職場を提供し、企業には障害者に向けた業務の切り出しが困難という問題を解決して障害者雇用に関するノウハウを提供し障害者雇用をサポートします。
法定雇用率を上げるための事実上の障害者雇用の代行ではないか、業務からの障害者の排除にあたるのではないかという問題点を指摘する意見もあります。
参考:「障害者は喜んで農園で働いている」はずが…国会がNGを出した障害者雇用〝代行〟ビジネス 大手有名企業を含め800社が利用(47NEWS) – Yahoo!ニュース
障害者によって運営される靴リペアショップ店舗を自社に設営
靴リペアのショップを社内に創設し、靴のリペアやクリーニングなどのサービスを行う取り組みもあります。
設備などの初期費用が高額になるのと、ランニングコストがかかるのが問題点です。
カスタマイズ就労
カスタマイズ就業とは、従業員と雇用主の雇用関係を双方の課題解決のための需要を満たし、かつ、お互いを活かしあえる方法で働き方を個別設計することを指します。
そのために障害を持つ方の強み、要望を実現するだけでなく、雇用主の課題にも応えられるように工夫し、企業の課題解決のために貢献できる職務領域を決定していきます。
働く個人と企業の双方にメリットが大きい働き方です。
関連記事:カスタマイズ就業とは(手段と効果) | 障害を持つ方向け就職支援〜Salad〜
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす職のサポートをします
まとめ
障害者に向けた仕事の切り出しがカギになる
障害者雇用支援サービスの有効活用には、企業と障害者の架け橋として機能し、適切な職種や業務内容の選定が成功のカギとなります。
障害の種類や程度、個々のスキルや適性を的確に把握し、その上で職場のニーズとのマッチングを図ることで、障害者が意欲的に仕事に取り組む環境をつくり出せます。
成功事例は、障害者の多様な才能や可能性を引き出し、企業の生産性向上や多様性の促進にもつながる可能性を示しています。
企業が適切なサポート体制と共に、障害者の個性を尊重し、彼らの強みを最大限に引き出す職場環境づくりに取り組むことが重要です。