【認知行動療法】「スキーマ」とは?思考のくせ改善のポイント

スキーマとはなに?

人前で反すことが苦手だというスキーマから、緊張する男性社員

スキーマとは

スキーマ」とは、人の認知過程を説明する際に使われる概念の1つであり、認知心理学の用語です。「いつも良く失敗しているから、今回も失敗するだろう」など、言わば自分が生きていく上での「ルール」や「パターン」のようなものです。

参考:スキーマとは体験や知識が体制化されたもの|今すぐ使える新時代の心理学講座ポータルサイト

さまざまなスキーマの種類がある

このスキーマには、さまざまな種類のものがあります。

スキーマの種類としては、

・人物スキーマ…特定の特徴を持つ人物に対して、それに対応した価値観をイメージする
例.顔が怖い人は、性格も怖いだろうと考える など
・自己スキーマ…自信の特定分野における行動・行為のためにイメージする
例.自分は社交的な性格だから、周囲の人間とよく話せると考える
・事象スキーマ…状況対応するためにイメージする
例.電車に乗るときは駅に行く→切符を買い改札を通る→電車に乗る…という流れをインプットする など
・役割スキーマ…自分の社会的な役割を果たすためにイメージする
例.「上司」であるから、相応の対応をしようと考える など

これらのように、多様な社会的スキーマがあると考えられているのです。

参考:スキーマ | 認知心理学|科学事典

スキーマを持つメリット・デメリットは?

スキーマの特徴について知りたい男性

スキーマを持つメリット

スキーマを持つことで、様々なメリットがあります。

・過去の経験や知識から、危険を予測することができる
・一つの行動を「パターン」として理解し、行動や判断をスムーズに行える
・関連したものを結びつけて考え、全て0から考える負担をなくす

これらのメリットがあります。分かりやすく説明すると、白紙の状態から始めるのではなく、スキーマによって予め様式ができている状態から始められることになります。

今回は、普段の『手を洗う』行為に例えて説明しましょう。水道の蛇口をひねることや手の洗い方まで、本来は複雑な動きを「手を洗う流れ」というスキーマによって効率化させているのです。こうして行動のパターンを定めることによって、一つ一つの行動を効率的に行う働きがあるのです。

また、物事が起きた際に情報が足りない場合、最も典型的と認識している例で埋めようとする働きもあります(例.中華食堂に行ったらメニューがなかった。けれど、中華だから餃子はあるだろうと判断する…など)。

スキーマを持つデメリット

スキーマを持つことでデメリットとして働いてしまうこともあります。

・思い込みや先入観から、情報不足のまま決断してしまう
・過去の体験をもとに、ネガティブな思考をしやすくなる
・行動や環境の変化の際に労力を要するときがある

このようなデメリットもあるのです。例えば先ほどの「人物スキーマ」を例にして考えてみましょう。過去に怖い顔の人からひどいいじめを受けた経験があると、以降『怖い顔の人は、みんな悪い人』という先入観につながってしまうケースがあります。このような思い込みや先入観を持つことで、対人関係で苦労することが出てくるでしょう。

また、これまでのスキーマにない「パターン外・想定外」の物事に対し、『そんなことはありえない』と情報を確認せずに拒否してしまうケースもあります。まだトライしていないのに、『上手くいったことがないから、できるはずがない』と受け入れないのも、この例です。

これらの事情により、精神疾患など体調を崩してしまうことにもなりかねません。

参考:自分のスキーマに気づく | 東京認知行動療法センター

スキーマを改善し、上手く向き合う方法はある?

スキーマを改善できず、困って考え込む男性
スキーマによって悩むことや困難に直面する機会もあるでしょう。しかし、スキーマを完全になくすということはできません。また、スキーマの良い部分のみを活かすことで得られるメリットもあります。

では、スキーマを改善し、上手く向き合っていく方法にはどのようなものがあるのでしょうか。そのカギとなるものが『認知行動療法』です。これによって認知の歪みに気づき、思考のくせを改善することにつなげていきます。

参考:認知行動療法 Cognitive-Behavioral-Therapy (CBT) | 銀座泰明クリニック

『認知行動療法』とは?

アドバイスしている医師(男性)
まず、認知行動療法について少し説明しましょう。これは自分の中の「思考のくせ」を見つけて考え方や行動を改善することでケアをしていく方法です。ストレスや不安のもととなるスキーマを修正して、ポジティブな思考に変えていきます。

認知行動療法については、こちらの記事もしくは下記の関連記事で詳しく紹介しておりますので併せて参考にしてみてください。

参考:認知行動療法とは|認知行動療法センターのご案内|認知行動療法センター

関連記事:認知行動療法とは?セルフケアで発達・精神障害の不安を解消!

【認知行動療法】スキーマ改善の流れ

スキーマを改善し、主体的に働く姿勢を見せる男性

悩みやネガティブ思考の原因となるスキーマを見つける

まずは悩みやネガティブな思考の原因となっているスキーマを見つけましょう。方法は、「その悩みや思考をいちど肯定し、その意味について考えてみる」ことです。これを真実を表す断定的な表現になるまで自問を繰り返し、掘り下げていく作業になります。分かりやすく例に挙げて説明していきましょう。

【スキーマを見つける例】※思考の一例であり、事実とは異なる場合もあります。
悩み『結婚できなかったらどうしよう』←この意味について考える

『一生、一人で暮らすことになる』←「なる」と仮定して、意味について考える

『何の楽しみもない、不幸な生活で一生を終える』←「終える」と仮定して、意味について考える

『結婚して家庭を持たなければ、人は幸せになれない』←スキーマ

このように掘り出しながら、自分自身が根底に思っているスキーマを見つけていきましょう。

メリットとデメリットを書き出し、役に立つスキーマかどうか検証してみる

次に、そのスキーマから生じるメリットとデメリットを書き出してみましょう。上の例でいえば、『結婚して家庭を持たなければ、人は幸せになれない』と思い込むことによって生じるメリットやデメリットのことです。

例の一つとして、今回のケースのメリットとデメリットを挙げてみましょう。

(メリット)
・『結婚しよう』と意識できる
・好かれる人になろうと努力できる

(デメリット)
・現在の生活を楽しめない
・『嫌われるかもしれない』と不安や緊張を伴ってしまう
・自由に生きている人、独身生活で楽しんでいる人を見るとイライラする

…あくまでも一例ですが、このように文字として書き出すことで、分かりやすくなります。その後『自分にとって役に立つかどうか』を判断基準にして、スキーマを検証していきましょう。

生きやすいスキーマに書き換える

もし検証したスキーマが「役立ちそうにない」ものであれば、改善していきましょう。方法は、より柔軟に生きやすいスキーマに書き換えることです。今回の『結婚できなければ…』の例で説明していきましょう。

【スキーマ更新の例】

(改善前)
『結婚して家庭を持たなければ、人は幸せになれない』

(改善後)
『幸せかどうかは自分次第。結婚=幸せとは限らない』

このように、「~すべきだ」「~でなければならない」と限定された考えの許容範囲を広げてあげる感覚で行うのがポイントです。この場合、結婚自体を否定しているわけではなく、かつ結婚できない現状も否定していません。現状のありのままの自分を受け入れる思考に改善することで、精神的な負担が緩和されていくのです。この様なイメージでスキーマを書き換えてみましょう。

参考文献:今日から使える 認知行動療法 | ナツメ社

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まとめ

自分自身を整え、充実している男性
いかがでしたでしょうか。

『トラウマ』などように、一度染みついた思考を改善するというのは簡単ではありません。「改善したほうが良いのは分かっているけれど、悔しくて変えたくない」などの感情も涌きやすく、苦労することもあるかもしれません。

ですからすぐ解決させようとせず、少しずつ取り組んで改善させていきましょう。

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