JAH-KNIT代表であり、ニットデザイナーの伴真太郎さんは、
『社会課題の中に埋もれた価値や可能性を再発掘し、ファッションの力で蘇らせる』というミッションを掲げ、活動を行っています。
伴さんは、ニットデザインの仕事を行うなかで、海外を旅し多様な価値観と触れ合ってきました。
そのなかで出会った現地の毛糸や生地を活かし、現在はニットデザインの創作活動を福祉事業で行っています。
創作物のストーリーを大切にすることで、付加価値を高め、人の心を豊かにしたいと考えているそう。
そんな伴さんにとっての仕事の充実感は、『ちっちゃい達成感のプロデュース』であると語ります。
ニット編みは、障害のあるなしに関係なく仕事にできる
根気強い、細かい作業が苦にならない人でないと、
ニットを編み続ける集中力が続かないそうです。
柄編みなど模様を描くニットは、例えば100回編むと一段を終えるなど、自分が編んだ数を常に数えなければいけないそう(筆者には向いていない、、)。
集中力、根気が必要な仕事です。
ここに向いているかどうかは、障害のあるなしに関係なく、好きかどうか、成し遂げたいかどうかが大事だそうです。
例えば、趣味や感覚が、ボディビルなど『トレーニングして育てていく行為が好き!』というタイプの人は、ニット編みの仕事に合うそうです。
細かい作業が苦手な方にも、合う仕事をみつける
作業所で、セーターの編み方を習っても、「こんなこと学んで何になるの!」と施設の利用者さんから言われることもあったそうです。
伴さんが「一緒にかっこいいことをしたい!」といっても、自分のやりたいことと違うと腹落ちしない方もいらっしゃいます。
根気、集中力が必要な仕事であるが故に、向き不向きが顕著に現れます。
ニット編みが好きではない人もいます。
伴さんは、「みんな編めるようにならなくてもいい」と考えています。
事業全体で、仕事を割り振れるようになることが大事だと語ります。
例えば、セーターをほぐす役割の人もいます。
セーターは脇の下であったり縫われている部分があり、縫われているところを切り離せたら、ポロポロとどんどんほぐれていきます。
その解いた糸を、ローラーでまく仕事のひともいます。
ニット製品を売るための販路開拓も必要ですし、売り上げの計算や事業を管理する仕事も必要です。
ニット作りの工程を、上流から下流まで行おうとすると、編み物だけがニット作りではないことが理解できていきます。
作ることも壊すことも達成感があり、必要な仕事です。
細かい作業が苦手な方にも、合う仕事を見つけることがニット事業を深く理解している伴さんの役目です。
憧れを仕事にする。達成感を感じられる環境づくりが、伴さんのやりがい
伴さんの仕事のビジョン(成し遂げたい未来像)は、
『障がいや病気をネガティブに捉えるのではなく、思いや力を商品に注ぎ込む活動によって、ポジティブな世界を引き寄せる』
ということだそうです。
簡潔にまとめると、ニット作りを通して、憧れを仕事にするためのちっちゃい達成感のプロデュースを行っています。
自信をなくしてしまった方々に、ニット作りを手段とし、ちっちゃいことの達成感を体感し、嬉しさや幸福感を高めてもらうことを目的に活動されています。
達成感が積み上がってくると、目に見えて向上心が現れてくるそうです。
『もっとできるようになりたい!もっと成長したい!』
このような気持ちを膨らませるためには、ニット作りってカッコいい!憧れる!と思ってもらう必要がありますので、伴さん自身がニット作りを通してカッコよく生きている姿を見せていくことも大切だと考えているそうです。
事業をつくっていく
好きなことを仕事にする、というやり方だけでなく、能力を持っているからこういうことをやってみる!という仕事の作り方もアリだと考えています。
できていたことが、急にできなくなったということもあります。「やりたくないことをやりたくない!」と言えることも必要です。そういう環境を作るために、常に魅力的な仕事が用意できる状態を継続していくことが必要です。そのためには、しっかり事業を作っていくことがとても大事になってきます。
伴さんは、糸のインポーター(イタリアにあるセーター業界のトップリーダー)とのつながりが深く、材料を集めてくることが得意です。
今までは、自社の商品を売ることに集中していたそうですが、作業所の強みと合体させ、他の会社では真似できないものづくりの実現を行っていきます。
ニットやセーターにまつわるブランドを立ち上げ、ムーヴメントをおこしていき、『ひとがポジティブになっていく爆心地を作る』ことが伴さんの夢です。
伴さんだけが感動するということではなく、参加したみんなが感動できる事業にしてきたいそうです。
『ありがとう』を伝えていく
世界では、「誰が洋服を作っているかわからない」という問題があります。
伴さんは、海外で安い賃金で酷使されてしまうアパレル業界の課題には、買う人にも原因の一端があるのでは?と考えているそうです。
そこで、ニットの購入者が、製作者にコンタクトし、ありがとうを言える仕組みを作ろうとしています。気持ちのフィードバックをできる仕組みを作っていき、「一緒に参加したい、いい製品を作りたい!」という流れを広げていきます。
感謝の気持ちがモチベーションになることを、伴さん自身体感されているそうです。
作業所のなかでしか生きていない人がいたとして、『楽しくない、達成感がない!』と、褒められることもない、停滞したモチベーションになっていたら、どうしても楽しくない人間になってしまいます。それは、その人自身のせいではなく、施設の環境にも責任の一端があります。
病気に対する配慮も大切だけど、感情の動きを大切にし、『こうしたらもっといい!、もっと喜ばれると思う!』などポジティブな言い方、ポジティブな伝え方を日常化していって、ポジティブな連鎖を起こすことができたら、どんどん効果が相乗していって素晴らしいものになるのでは、と考えています。
達成感は自分でしか得られない、
そのための行動を起こせるようプロデュースしていく。
これが、伴さんの取り組みです。
いかがでしたでしょうか。
伴さんの取り組みに関心がある方は、連絡をとってみてはいかがでしょうか。
達成感が未来につながる、とても素敵な考え方だと筆者も感じました。
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