ちゃんと聞いているのに、「人の話を聞かない」と言われる
「人の話を聞かない」とよく言われる
職場内や友人との会話の中で、「人の話を聞かない」「ちゃんと話聞いていたか?」と言われることはありませんか?
もちろん相手の話を無視するような、本当の意味で「話を聞いていない」ケースは少ないでしょう。だからこそ「しっかり聞いているのにどうして『聞いていない』扱いなの?」と感じやすいかもしれません。
聞こえているかではなく、意識を傾けることが不足している可能性がある
しかしながら、ここでの「聞く」と言う意味は「聞こえている」という意味での言葉ではない可能性が高いでしょう。
大切なのは聞いた情報に意識を向けて、自分なりに表現してみることや受け止めてみることを含めているケースがあります。
「人の話を聞いていない」とよく言われる場合は、このような「傾聴力・共感力」に問題を抱えている可能性があるかもしれません。特に、発達障害を持つ方は「そうしたら相手の話を聞くってどうやればよいの?」と感じているケースもあるでしょう。
今回は、そのような「人の話に耳と意識を傾ける」力をアップさせる方法、『アクティブリスニング』について説明します。
アクティブリスニングとはなに?
アクティブリスニングとは
「アクティブリスニング(Active Listening)」とは、カウンセリングにおけるコミュニケーション技法の一つです。相手の言葉を『進んで傾聴する』姿勢や態度、聴き方の技術を指す用語です。日本では、「積極的傾聴」とも呼ばれています。受け身状態で耳に入って来るという感覚ではなく、自ら相手の話を迎え入れる姿勢で聞くことで言葉の事実や心情をつかんでいく方法です。
それでは、アクティブリスニングにはどのような特徴があるのでしょうか。
アクティブリスニングの特徴
原則、人間に対して楽観的・肯定的に見る
アクティブリスニングは、人間心理に関して楽観的・肯定的に見ていくことが特徴の一つです。人間には誰しも「自己実現・自分で解決させていく力がある」と考えられています。相手に答えを教えることではなく、話し手を信用し自ら答えに気づかせることが、アクティブリスニングの目的です。
聞き流すのではなく、積極的に「聴く」
アクティブリスニングは、ただ受け身姿勢で『聞き流す』こととは異なります。ここでの「聴く」は相手の話をヒントにして、言葉の中にある事実と感情を把握していく方法です。
そのため、心構えとして
・相手の考えや気持ちを、相手の立場や視点から理解する→共感的理解
・自らの判断や評価の枠組み(思い込みや先入観・固定観念など)を一旦外し、相手の価値観や心情を受け入れる気持ち→受容の精神
この2つが必要です。
アクティブリスニングは、普段のコミュニケーションでも活用できる
ここまでの話を見ると、「アクティブリスニングは、カウンセラーなど専門家だけに関することなのでは?」と感じたかもしれません。しかし、アクティブリスニングはカウンセラーだけに必要なスキルではなく、普段のコミュニケーションでも活用することができるのです。
職場や友人関係などで、「人の話を聞かない」と言われる場合に、その問題を解決するヒントになる可能性がある方法になります。
アクティブリスニングの「聴き方」の方法にはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
アクティブリスニングの「聴き方」
自己一致
「自己一致」とは、聞き手が自分の考えや価値観を否定せず、ありのままの自分でいる状態を指します。
ポイントとしては、「話を聞いた最初に、自分の中で結論や答えが見えている時」の対応です。分かりやすく、新入社員と先輩社員(3年目)との会話を挙げてみましょう。
【自己一致:悪い例】
新入社員:「先輩、やっと3ヵ月働き続けることができました!」
先輩社員:「3ヵ月なんて大したことないよ。すぐに3年になるさ」
この例だと、先輩社員は「入社3ヵ月」を経験していますが、新入社員は初めての体験なわけです。確かに先輩社員の言うように、その先には長い道のりがあるかもしれません。しかしこれでは、本当の意味で「相手の話を聞いた」ことにならないケースがあるのです。
【自己一致:良い例】
新入社員:「先輩、やっと3ヵ月働き続けることができました!」
先輩社員:「3ヵ月か…自分も3ヵ月経った時は達成感があったし、うれしかった記憶があるよ。よく頑張ったね」
この例の先輩社員の話し方は、新入社員の「入社3ヵ月経ったときの感覚」を共有したうえで話していますよね?先輩として無理に飾ってもいません。これがアクティブリスニングの「自己一致」になるのです。
共感的理解
「共感的理解」とは、相手の立場や価値観から見て物事を理解しようとする姿勢を言います。1つの物事に同じ見解を持つことで話し手に安心感を与えることが目的です。
先ほどの新入社員と先輩社員の例で説明しましょう。【悪い例】の話し方では新入社員は「自分の達成感を理解してもらえない」と感じたかもしれません。【良い例】のように、「自分にも同じ感覚を持ったことがある」ことを伝えることで、新入社員は安心感を持つわけです。
無条件の肯定的配慮
無条件の肯定的配慮とは、話し手の言動や考え方に対して否定や評価をしない姿勢のことです。
先ほどの新入社員と先輩社員の例で考えてみましょう。【悪い例】の方では、新入社員の「入社3ヵ月後の達成感を否定している・評価している」言い方にもなりかねません。このように、自分の中で「間違い・異なる」と感じても【良い例】のように否定をしないようにするのが「無条件の肯定的配慮」です。
アクティブリスニングは、言葉以外の表現も大切
アクティブリスニングにおいて大切なのは、言葉のやり取りだけではありません。「ノンバーバルコミュニケーション」と言われる、言語以外のコミュニケーションにあっても大切です。ここではアクティブリスニングに必要なノンバーバルコミュニケーションを紹介しましょう。
【アクティブリスニング】ノンバーバルコミュニケーションの主な種類
共感と繰り返し
アクティブリスニングには、相手の話す内容に出てきた感情表現や、話す雰囲気から感情を想像することが求められます。
この想像した「相手と同じ感情」を言葉にしていくことが「共感と繰り返し」です。
オープンエンドクエスチョン
「オープンエンドクエスチョン」とは、「YES」「NO」で答えられない質問のことを言います。業務上の報告など早期に結論を要する場合は、反対に「YES」「NO」を活用するほうが良いでしょう。しかし、話し手が共感を求めている「アクティブリスニング」の場では異なります。
それは「YES」「NO」で終わる質問を続けると、会話のテンポが悪くなることがあるからです。
コツとしては、「違う」「正しい」と言う言葉ではなく、「それはどんなこと?」「どうやって?」などの会話が途切れない質問をしていきます。
大切なのは答えを教えることではなく、「話し手が自ら答えに気づく」ことなのです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
発達障害など、人と接するうえで苦労されていることがあるかもしれません。自分が上手くコミュニケーションが取れていないことには気づいていても、その原因が分からないということで悩むケースも多いです。
アクティブリスニングは、そのような悩みを解消してくれる方法の一つです。もし「人の話を聞かない」と言われることが多ければ、アクティブリスニングにトライしてみることも良いかもしれません。