まず、前提として、「誰ひとりとして、同じ世界感を持っている人はいない」というスタンスで考えていく必要があります。
私たちは、同じひとつの世界に住んではいますが、内面に持つ”世界観”が同じ人は誰一人としていません。つまり、それぞれが全く違う認識を持って現実で生きています。そのため、他人のことを心から理解するのは、どんな人にとっても容易ではないのだと考えます。
ですが、ここで諦めてしまっては、社会もコミュニケーションも成り立ちません。難しいからこそ、理解しようとする気持ちや指針が必要になるのです。
この記事では、自らが生きやすい環境をつくっていくために、必要な考え方、行動の指針となる要素をまとめました。
◎他者を受容し、尊敬すること(多様性の理解、尊重)
◎限られた視点にとらわれないこと(目的と手段の整理)
◎成熟したコミュニケーションを目指すこと(対等な関係性、自立の構築)
それぞれの要素について、詳しく説明します。
①他者を受容し、尊敬すること
冒頭にお伝えしたように、誰一人として同じ世界に生きているわけではないということを想像し、他者と接していく必要があります。
幼少期から現在に至るまで、全てにおいてあなたと同じ境遇、経験を持つ方がいないことと同じように、
この世界もそれぞれの方の考え方や状況により、見え方が異なります。
あなたの世界観は尊重されるべきですが、
幸せを実現するためには、変化し成長する世界に価値貢献すべく、日々少しでもいいので成長し続けなければいけません。
同様に、他者の世界観を尊重し、自らと異なる多様性を認め受容することが、
自らの答えを、自分で見つけられること(=自立)につながっていきます。
これは、一朝一夕でできることではありません。
毎日の継続、習慣で培われるものです。
継続はひとりでは難しい面もあります。
あなたの理解者や応援団など、適切な支援者をみつけていくことも大切です。
②限られた視点にとらわれないこと
スキルを伸ばすことが、仕事につながるという側面は確かにありますが、
感覚としての自立を実現することが大切です。
働くことを目指そうと思うと、就労に向けた職能訓練に目が行きがちですが、
生きる目的や、幸せになるためのスタンス、個人の特性理解など、
「感覚としての自立」に向け、大きく高い視座で、多角的な視点から考えていく必要があります。
目的を、
「自分と大切な人を幸せにすること」とすると、
就業は手段のひとつでしかありません。
ただ、適切な就業が実現すると、
自己実現や人から感謝されることの充実感から、目的の達成に大きく前進しますので、
「就業」が有効な手段であることは間違いありません。
また、夢や目標は、他者と自分を切り離して考えていく必要があります。
他人の夢のために行動し続けることは、ある種病んでしまうことにつながりかねません。
自立を目指すにあたり、障害は関係ありません。
障害を自らの特徴とし、自らの目標や夢の実現に必要なことは何であるのか、
限られた視点にとらわれずに行動していくことが必要です。
③成熟したコミュニケーションを目指すこと
人間性の成熟とは、
「自身も自立しながら、多様な観点を学び、受け入れていく」ことで実現していきます。
自分の観点や考え方だけで判断してしまうと、自らの常識のおしつけとなり、信頼関係の構築につながりにくくなってしまいます。
合理的配慮という言葉がありますが、配慮という視点だけではコミュニケーションに上下関係が発生してしまい、この関係が長期に渡ってしまうと支配構造となってしまうケースがあります。
支配構造では、ルールに縛られ目的も見失い自立の実現が難しくなります。
ルールが多くなりすぎると、そのルールに属する個人は自立から遠ざかってしまいます。
対等な関係としてお互いの価値観や目的を尊重し合うことで信頼関係が構築できていきますが、そのためには個々が人間性の成熟に向けて成長を続けていく必要があります。
障害者を取り巻く環境において、
以前は、サポート(支援)という概念はあまりなく、ヘルプ(上下関係として助ける)が当たり前でした。
人権に対する考え方は、この十数年でかなり変わってきました。
この流れをさらに促進し、多様性を活かしかつ対等に尊重し合う世界に変えていくには、
「いい混乱」が必要なのでは、との議論もあります。
いい混乱とは、複雑性を解きほぐし適切な手段を見出すために行う前向きな七転び八起きです。
変化の大きな世の中において、多様性に満ちた考え方や生き方を認め、
他者への尊敬とともに、自らが自立する。
そのような成熟したコミュニケーションを目指すことで、
自らが生きやすい環境づくりも自然と行われていきます。
以上です。
いかがでしたでしょうか。
参考としていただけたら幸いです。
対談:コンフィデンス早稲田 ×salad編集部
佐藤惠子さま 越智孝之さま