いい会社と聞いて、思い浮かぶ条件は、人によって様々です。
「有休が取得しやすい」「事業が世の中のためになっている」「残業が少ない」「給料の違い」…などなど
いろんな条件があり、たしかにどれもいい会社の要素だと思います。
ただ、とても大切な要素の一つとして、「社員の能力が活かせる環境を整えられている会社」こそ、いい会社の条件であると、東京都産業労働局の職員であり発達障害専門のキャリアカウンセラーの木津谷岳さんは語ります。
人事が大きな役割を果たす
会社をよりよく成長させていくにあたり、これからは人事が大きな役割を果たしていくこととなります。
・経営者に対し、多様性を活かした組織の構築方法の提案
・現場(部門長)に対し、メンバーが成果を出しやすくするための方法の提案
このような提案を行っていくには、人事が社員が持つ特性や能力の活かし方にまつわる知識や経験を増やしていく必要があります。
たとえば、障害者雇用においても雇用義務を経営側に押し付けるのではなく、能力を活用する手段の質を高めていく必要がある、ということです。
能力の活かし方については、自分たちが知らないだけで、支援者や障害者雇用に強い人事やキャリアカウンセラーとの連携により、自社に合うノウハウを吸収することは可能です。
実際に、これは使えるというものがあれば、是非取り入れて会社を成長させていって欲しいと考えています。
これからの管理部門は大変、、
トップ(経営層)と、関連部署の責任者との、連携を深め、広げていくこと(社内組織のコミュニケーションの質向上)が求められていきます。
傾聴と共感、コミュニケーション力が、高いレベルで必要になっていきます。自らの主張を発信する、押し付けるのではなく、それぞれの立場の意見を理解し、発想力を高めていかないといけません。
大勢の人間がいて、それぞれの立場を理解した、組織の一体感を醸成していくため、
会社の目標やビジョンの達成に向けた方向性を定めていく。
そのための信頼関係の構築を、組織レベルで行っていく必要があります。
そのための管理部門のスタンスとして、トップとの連携が大切になってきます。人事の主張を、会社のメッセージとして認識してもらえるよう、伝え方も重要になってきます。
社員一人ひとりの能力を最大限活かすことが、組織の利益に繋がるということを、経営陣と管理部門、現場全体で理解し行動し続けることが大切です。
発達障害者を雇用に活かす!
去年、東京都で障害者雇用において優秀な評価を受けた会社を見学しました。
ただ、残念なことに多様性を理解し能力を活かすことのできる組織とはできていないように感じられました。
知的障害と身体障害の方しかおらず、精神・発達障害の方が雇用されていませんでした。
精神障害者の雇用について、
「毎年全国的に人数が増えていますけど、雇用を考えていますか?」と聞いてみたところ、
『精神障害者の人数は毎年変動し、雇用数変動のリスクがあるため、前向きになれない』
という返答でした。
そこで強く感じたことは、障害者雇用においては、雇用目標数など数字を達成することがいい会社ではなく、能力を活かせる環境を整えられている会社がいい会社。
ということです。
能力を活かすことができるような環境を整えるためには、公平さよりも、公正さが求められます。
「公平さ」とは、例えば、どの人に対しても同じサービスを提供することです。
「公正さ」とは、対象者の状況に合わせて、同じレベルにできるように、サービスや配慮を変えることです。
大人や子供、男性女性、それぞれの特徴にあったツールや、提供してもらう価値を変えていく必要があります。公正さは、一般的には普通に行われています。
視力の弱い人がメガネをかけることを、わざわざ配慮と言ったりはしません。
同様に、人事はそれぞれ働いている社員の能力が「公正に」活かせるように、知識と経験を深めていかなければいけません。
また、支援者(就労移行支援事業者)も、人事や企業の状況について、勉強していく必要があります。
体力のない企業に対し、車椅子対応の設備を整えろ、というのはなかなか現実的ではありませんし、これに近い状況が頻発していることが現実です。
企業が後ろ向きになることのないよう、できることを提案していく。適切な折衷点を見つけていくために、支援者も頑張らないといけません。
合理的配慮とだけ主張する支援者はまだまだです。
会社に対し、「こうしたらもっと価値を生み出せる」と言える支援者が大勢いれば、もっと会社はよくなります。
会社は会社で、世の中に自分の会社が「いい会社」ということを示していくと、いい人が集まり会社も盛り上がっていきます。
社員の能力を活かすため、公正な組織開発を行っていきましょう!
いかがでしたでしょうか?
企業の発展と、能力の活かし方など、参考としていただけますと幸いです。
木津谷さんは、発達障害を抱える方の「異能」を生かした雇用が、企業の利益に寄与する例を紹介しながら、積極的な雇用の価値を示すとともに、カギを握る就労支援機関との付き合い方などを企業向けに説明する本を出版されました。
企業人事だけでなく、当事者の方も読むことによって自らの経験や能力を活かす気づきが得られると思います。
【リンクより書籍の紹介】
→専門キャリアカウンセラーが教えるこれからの発達障害者「雇用」
木津谷岳[キズヤタカシ]さんのご経歴
発達障害専門のキャリアカウンセラー。東京都産業労働局所属。担当は障害者雇用促進。19年間のデパート勤務を経て、一般企業の人事に転身。法定雇用率未達成企業で障害者雇用に携わり、その後、行政の立場から障害者雇用を推進。発達障害者雇用支援アドバイザーとして企業コンサルタント、セミナー講師として活動中