【人事向け】在宅勤務制度は、精神・発達障害の方を雇う際に有効か

精神障害、発達障害を持つ方を雇う際には、働く環境がとても大事

在宅就業を受け入れるか悩む人事

法定雇用率が改正され、精神障害や発達障害を持つ方を雇用する企業が増えています。

ただ、その一方で、その半数が1年以内に離職していることが現状です。精神障害や発達障害を持つ方の多くは、環境面の刺激にとても敏感です。それらを受け続けることで体が負担を感じて、結果的に体調不良につながってしまうことも少なくありません。

ですので、精神障害や発達障害を持つ方を雇用する際には、環境面での刺激を極力減らして体に感じる負担を少なくすることが重要なのです。

先入観で決めずに、入社者の希望をまずは聞く

精神障害や発達障害というのは、見た目から判断しづらいため、その特性が軽視されがちです。

就職する際も、障害を有する当事者自身が持つスキルだけが重要視されてしまい、配慮がおろそかになってしまうことも少なくありません。まずは、入社される方が配慮事項として何を求めているのかをしっかりと聞くことが大切です。

また、時間の経過にかかわらず、配慮そのものは継続して必要であることも認識しておきましょう。

精神障害、発達障害と一言にいっても、特性や困難に感じていることは一人ひとり違います。『この障害だから、この配慮が必要』という大枠の概念だけにとらわれず、入社する本人の訴えに耳を傾けることが重要なのです。

在宅勤務向きの仕事とは

近年の『働き方改革』の動きから、働く場所に左右されない『アウトソーシング』や『テレワーク』といった業務形態が話題になっています。

精神障害や発達障害を持つ方の中には、体調不良時に対応しやすい点などから在宅勤務を考えている人もいるようです。

では、精神障害や発達障害を持つ方が在宅勤務する上で、どんなお仕事が適しているのでしょうか。

【成果物が明確かつ、自己完結性が高い業務】

在宅勤務に適した業務として、
1)成果物がわかりやすいこと。
2)手順などが、比較的自分の中で成立させられる(自己完結性が高い)業務であること
この二つが条件としてあげられます。

精神障害や発達障害の多くが、コミュニケーションが苦手であるといわれています。

これらは、たとえば職場での報連相が上手くいかなかったり、業務上の指示がなかなか伝わらないといった困難さを引き起こします。ですので、在宅勤務でも資料作成などやり取りが複雑になるような業務は、出来るだけ避けた方が負担が少なくなります。

また、データ入力や帳簿の管理といった比較的単純作業で成り立つ業務は、自己完結性が高い業務なので、在宅勤務に向いているでしょう。

実際に在宅勤務を採用している企業では、主に店舗の売り上げ集計や、人事システムの処理などをお願いしているようです。業務を依頼する際には『○○番』や『○月○日』といった具体的な数値や納期をお伝えすると、先が見えない不安感が軽減されて、安心してお仕事に取り組めます。

【ライターやプログラマー、Webデザイナーなどは特に相性がいい】

Webデザインを行うロボット

特に発達障害を持つ方の中には、発想力に長けている人も多くいます。

文章を考えるライティング業務や、システムを動かすプログラミング業務、色彩などのセンスが重要になるWEBデザインは、相性がとても良い業務と言えるでしょう。また、得意分野としている人も多いので、上手くマッチングできると仕事に対するモチベーションアップにもつながります。

在宅勤務は、仕事内容によってやはり有効!

精神障害や発達障害を持つ方にとっての在宅勤務は、仕事内容の制限は受けるものの特性を考えると有効な手段だといえます。

また、お仕事をお願いする際には本人の負担にならない程度の納期設定や、報連相の方法なども相互に打ち合わせしておくことが大切です。

在宅勤務制度を整えるには

これまで、精神障害や発達障害を持つ方が在宅勤務をするメリットについてお伝えしました。

しかしながら、在宅勤務者を採用すると言ってもまだまだ心配な点も多いことでしょう。在宅勤務制度を整えるには何が必要なのでしょうか。

成果による評価制度を整える

実際に在宅雇用をする場合、目の前で働いている様子を見ることができないので、放置となってしまわないよう、どのように仕事を評価するのかその指針を明確にしておく必要があります。

成果物の精度や、締め切りなどが守れているかなどはわかりやすい評価基準になるでしょう。また、目標を設定しその達成度による評価方法を取ることや、定期的にそれらの確認とフィードバックを行うことも有効です。

まずは、評価体制を明確にして、働く本人やその担当者が共通理解を持つようにしましょう。

セキュリティ対策を講じる

在宅勤務では、セキュリティ対策は必須項目です。

情報の持ち出しや保存・印刷、PCの設定、取り扱いに関する規定づくりはしっかりと行うことが大切です。業務で使用する機器は、個人のものを許可するのか、会社から支給されたものだけに限るのかをはっきりと定めておきましょう。

また、社内で使っている資料などがあれば、同じように目を通してもらいましょう。

総務省で公開しているテレワークセキュリティガイドラインにもわかりやすい説明があるので、参考にするとよいでしょう。

参考:総務省 テレワークセキュリティガイドライン(第4版)

労働時間の管理など、就業規則を整備する

在宅勤務者を採用する場合、その労働時間の管理や就業規則を見直す場合も出てくるでしょう。まずは、現行の労働時間や就業規則で対応できるのか、事前に検討しておくことが大切です。

精神障害や発達障害を持つ方の多くは、自分で作業を中断することが苦手な傾向があります。

労働時間や休憩時間があらかじめ決められていると、作業のやりすぎによる負担も減って効率良くお仕事に取り組めるでしょう。

また、労働時間の定めがあることで、仕事とプライベートの区別もつけやすくなります。休日労働や深夜労働については、本人とよく検討したうえでお願いするようにしましょう。

就業規則についても、現行の方法で対応できるのかを本人とよく検討し、相互理解を深めておきましょう。本人から変更の申し出があれば、内容をよく聞きとったうえで変更するか否かを判断するようにしてください。

変更した場合、社内への周知と労働基準監督署長への届け出も必要です。特に社内への周知は、はたらく本人の混乱を招く恐れがあるので意識して行うことが重要です。

労働時間を整備する人事担当者

在宅勤務制度をつくるには、社会保険労務士への相談がベスト

在宅勤務も、労働基準法や労災保険法などの法律が適用されます。そんな法律上の相談は、社会保険労務士に聞くのがベストです。就業規則の作成や、労働時間の管理などのアドバイスも受けられ、労使間トラブルへの相談にも応じてもらえます。

顧問社労士であれば、労務管理に加えて、障害を抱える方の雇用に関する助成金のアドバイスももらえる

会社と契約している顧問社労士なら、障害者雇用やトライアル雇用など、障害を抱える方を雇用するときの助成金制度についてアドバイスが受けられます。そのうえ、労務保険や労務全般に関する相談にも応じてもらえるので、活用することをおすすめします。

まとめ

精神障害や発達障害を持つ方は、自分自身で就労環境に合わせるのが苦手です。その一方で、自分に合った就労環境にいたことで、会社に大きく貢献できたという事例も聞かれます。

企業の法定雇用率が引き上げられたことで、障害を抱える方の採用を検討する会社も今後増えていくことでしょう。

障害を持つ方が元気に働ける職場は、他の従業員にとっても働きやすい職場になっていくはずです。ぜひ、前向きに検討してもらいたいです。

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